今では各メーカーとも優れたグリップ性能のスタッドレス・タイヤを販売しているが、20年ほど前は「ミシュランのスタッドレス・タイヤ」のグリップ性能は最高に評判が高く、僕も4WDのミニバンに装着して北海道の冬に2シーズン履き、3シーズン目にも履こうと考えたが、柔らかいゴム質で意外に減りも早かった。タイヤメーカーではタブーとは知っていても「何とかもう1シーズン履きたい・・・」の一心で僕はトレッド・パターンを逆にして履いた。こうすることで進行方向に対して、ゴムのブロックがクサビ形になり、ブレーキング時に効くと思ったからだ。実際に発進時はすべるが、ブレーキング時にはよく停まった。アイスバーンや新雪路面では何とか走れたが、問題はその後夏も履き続けていた時に起きた。夏休みにフェリーで本州に行く事になり、深夜の高速道路を室蘭港に向かう途中に豪雨に見舞われた。暗い上に雨で濡れた路面はヘッド・ライトの光を吸収し、濃霧で視界も悪く不安なドライブとなった。出航時刻も気になり少しスピードも出ていた。緩いカーブに差し掛かったその時、クルマが外に流れた。その後直線でも左右に流れハンドルが効かない危険な状態に。仕方なく減速したが、かなりの後続車にクラクションを鳴らされて追い抜かれた。原因は「水への抵抗が大きい冬タイヤ」にあったが、もう一つの原因は路面の「深いワダチ」に水が溜まりタイヤが浮く「ハイドロ・プレーニング現象」だった。教習所で教科書では見たが、実体験は初めてだった。出航時間には間に合ったが、あの時の恐怖は今も忘れられない。クルマのスピンは免れたのは幸いだった。夏タイヤでも雨量とスピードによっては危険な事故につながるから、雨天走行は十分に注意しよう。